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2007.12.01

井上荒野■ ひどい感じ――父・井上光晴

20071201inouehidoi

私の名前「荒野(あれの)」は本名である。

それを知ると、たいていの人はびっくりする。そうして、うっかり「すごいですねえ」と口走ってしまう。〔…〕

どういう意味か、と聞く人は、実際は「どういうつもりだ」と聞いているような気もするが、それは私も父に聞きたいところだ。〔…〕

小さな頃から、この名前のせいで、よく男の子に間違えられた。書類を見た人が勝手に決めて、げた箱や座席がいつも男の子側に設定されていた。学校のクラスが変わるたび、新しい担任の先生に名前についてあれこれ聞かれるのがいやだった。

しかし、この名前の最大の弊害は「平凡な人生が似合わない」ということだろう。

そして、それこそが父がこの名前にこめた願いであったに違いない。

――「父の方法」

*

*

■ ひどい感じー父・井上光晴|井上荒野|講談社|2005 10月|文庫|ISBN9784062752022

★★★

《キャッチ・コピー》

没後十数年たっても愛され続ける作家・井上光晴。その生涯は多くの謎に包まれていた。旅順生まれ、炭鉱での労働経験、それらはすべて嘘だった。

何事もドラマチックに仕立てなければならない、「全身小説家」井上光晴の素顔とは? そして、ガン闘病の真実。小説家・井上荒野が父の魅力のすべてを書きあげる。

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