ジェーン・ジャスカ/清宮真理:訳■ ふしだらかしら――老嬢ジェーンのセックスとロマンスをめぐる冒険
私が独りなのは、私が悪いからではないはずです。実のところ、そんなに寂しいとも感じていませんでした。ときどき訪れるあの瞬間を除けば。
街中を歩いているときや、タオルをたたんでいるとき、あるいはガソリンを入れているときに突然やってくるその招かれざる思考は、抑える間もなく私の顔の中を支配してしまいます。
「もし、この先二度とセックスができなかったら?」
それは胃を締めつけ、めまいをもたらし、夏の夜の稲妻のように私の眠りを妨げました。
エルムウッド・シアターの暗闇の中で、『恋の秋』の結末は、その孤独なヒロインにとってのハッピーエンドだったのだと思うことにしました。映画館を出て、冷たい夜風を爽快に感じながら家に向かって歩いていたそのとき、突然ひらめいたのです。私にだってあの映画と同じことができるはずだ、個人広告を出そう、と。どこに出すかはすぐに思いつきました。家に着く頃には、文面さえも決まっていました。
「67歳になる来年3月までに、好みに合った男性とたくさんセックスをしたいのです。まずは会話からとおっしゃるのなら、話題はトロロープでいかが?」
一言一句、本当のことでした。
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■ ふしだらかしら――老嬢ジェーンのセックスとロマンスをめぐる冒険│ジェーン・ジャスカ/清宮真理:訳|バジリコ|2005年 05月|ISBN:9784901784672
★★★
《キャッチ・コピー》
すべては「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」に掲載した個人広告から始まった。アントニー・トロロープの小説が大好きな教養ある女性英語教師が綴る、可笑しくて、ちょっぴり哀しくて、そしてまったくユニークな全米ベストセラーノンフィクション。
《memo》
2007年最後の1冊は、驚愕のノンフィクション。
BEFORE I TURN 67—next March –I would like to have a lot of sex with a man I like.
If you want to talk first, Trolloope works for me. NYR Box
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「ただ、この冒険の途上で出会ったほとんどすべての男性にとって、私は「試験台」であり、「打ち止め」であり、「最後尾」であり、「置き土産」だったのです」(本文より)
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