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2007.12.17

宮田昇■ 新編戦後翻訳風雲録

20071217miyatasenngo

田村はまず、再婚を宣言し、ずいぶん先の結婚の日を定め、つぎに式場を予約しながら、やたらに吹聴して、花嫁のいない披露算招待状もどきを配り、著者、翻訳者、友人、出版社から祝い金を集めまくって、飲んだりして散じた。〔…〕

結婚式と予告してあった日が、一、二か月後に迫った時、さすがの田村も慌てた。〔…〕

早川清は、「悲劇喜劇」昭和498月号の編集後記に、〔…〕つぎのように書いている。

「〔…〕花嫁の全然きまっていないうちに、挙式日と会場(日活国際ホテル大宴会場)を予約し、それを明記した披露宴の招待状を大量に出した男が親にわが社にいたのだ。これも当人の努力? と周囲の協力で、当日までに辛くも花嫁をみつけて、関係者のひとりである僕をほっとさせた事件が十数年前にあったのだ。

信じられない話だろうが、事実は厳として事実で、珍無類の出来ごとだった。つくり話でないあかしのために、すでに時効と断定して、氏名をあきらかにしてしまえば、当時小社の編集長だった、詩人田村隆一である」〔…〕

だが追いつめられた田村にとっては、どの女性でもよかったという事実は、最後までこの結婚につきまとうはずであった。

――「細心 田村隆一(1)

*

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■ 新編戦後翻訳風雲録|宮田昇|みすず書房|2007 06月|ISBN9784622080763

★★★★

《キャッチ・コピー》

戦後の混乱のなか、早川書房の「ポケミス」刊行開始は、エンターテインメント出版界の画期的な出来事だった。中桐雅夫、鮎川信夫、田村隆一、高橋豊、宇野利泰、田中融二、亀山龍樹、福島正実、清水俊二、斎藤正直、早川清。本書は、今となっては誰も語れない彼らの列伝・鎮魂歌であり、翻訳出版界の裏面史である。

memo

「戦後『翻訳』風雲録」――翻訳者が神々だった時代|本の雑誌社|2000 03月|ISBN9784938463885の新版。

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