« 岡山徹■ ひとり介護――母を看取り父を介護した僕の1475日 | トップページ | 田中義晧■ 世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 »

2007.12.09

童門冬二■ 師弟――ここに志あり

20071209doumonsitei 

芭蕉は静かに言った。

「河合さん、わたしの心の中には小さな鏡がありましてね、その鏡は世の中の出来事をそのまま映さないのです。世の中の出来事が鏡に映る前に、いろいろな屈折をしてわたしの心の鏡に届いた時には、違った形で光り輝いているのですよ」

「………」

曾良は無言で首を横に振った。わかりませんという意思表示である。芭蕉は微笑した。そして、

わたしが句を詠むのは、世の中の出来事そのままではなく、自分の心の底にある鏡に映ったものを詠んでいるのです。あなたは、あの雨の夜の出雲崎で天の河が見えますか〜」

「見えません」

曾良は正直に言った。〔…〕

芸術心が高まっていれば、雨の日本海にも天の河が横たわっているのがはっきり見える。そして、そんな存在のなかった市振の宿でも、同じ屋根の下に遊女が寝ているのだ。それらのすべてが芭蕉のいう〝心の奥の小さな鏡″に映ったものとして実在する。

この長い旅路で初めての師の弟子に対する厳しい教えであった。曾良は動揺した。狼狽もした。泣きたかった。

――芭蕉と曾良

*

*

■ 師弟――ここに志あり|童門冬二|潮出版社|2006 06月|ISBN9784267017414

★★

《キャッチ・コピー》

「教える側でもあり教えられる側にもなる」という「師弟の関係」。17組の歴史的「一期一会」を描いた、新しい人間発見の書。

童門冬二■人生、義理と人情に勝るものなし

嵐山光三郎■ 悪党芭蕉

井本農一■ 芭蕉入門

|

« 岡山徹■ ひとり介護――母を看取り父を介護した僕の1475日 | トップページ | 田中義晧■ 世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 童門冬二■ 師弟――ここに志あり:

« 岡山徹■ ひとり介護――母を看取り父を介護した僕の1475日 | トップページ | 田中義晧■ 世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 »