« 村上龍■ すぐそこにある希望――Men are expendable vol.9 | トップページ | 宮脇灯子■ 父・宮脇俊三への旅 »

2007.12.22

小倉千加子■ シュレーディンガーの猫――パラドックスを生きる

20071222ogurasyure

「赤毛のアン」で有名なカナダのプリンス・エドワード島に、調査のため1週間ほど滞在した。この島を訪れる日本人旅行者は、67年前から急増しているという。

私は、「赤毛のアン」に夢とロマンを求めてやって来る20代日本人女性について調べに行ったのである。しかし、そこでまったく別のタイプの日本人女性たちに出会うことになった。

それは、日本人旅行者目当ての観光ガイドやホテルのメイドの仕事を求めてやって来る、これまた20代の日本人女性たちである。彼女たちは、海外のあちこちを放浪してからシーズンの少し前に着のみ着のままでこの島にやってきて、仕事と下宿を見つけだす。〔…〕

日本社会への失望から海外に出る女性たちがジワジワ増えつつあるような気がする。

彼女たち棄国子女は、海外で職を見つけ、その地で配偶者を見つけ、永住権を取るという順序で、いつの日かすっかり日本を棄ててしまうのだろう。〔…〕

一見対照的だがひょっとしてとても似ているかもしれない日本人女性の2つのタイプが、究極のカナダと呼ばれる小さな島で、この夏にも出会うことになるのである。

――「棄国子女」

*

*

■ シュレーディンガーの猫――パラドックスを生きる|小倉千加子|いそっぷ社|2005 08月|ISBN9784900963313

★★

《キャッチ・コピー》

シュレーディンガーの猫とは、「理論は現実を予測し得ない」という物理学の世界の用語。フェミニストにしてエッセイの名手が、理屈で割り切れない現代人の生きにくさを語る。

|

« 村上龍■ すぐそこにある希望――Men are expendable vol.9 | トップページ | 宮脇灯子■ 父・宮脇俊三への旅 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小倉千加子■ シュレーディンガーの猫――パラドックスを生きる:

« 村上龍■ すぐそこにある希望――Men are expendable vol.9 | トップページ | 宮脇灯子■ 父・宮脇俊三への旅 »