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2007.12.26

田辺聖子■ 残花亭日暦

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病院内は静かだった。広い窓の外は半分、夕焼け。そんなつもりはなかったのに、傍の小椅子に坐り、おだやかな表情の彼を見るうち、子供のように顔が歪んで、涙が出てしまった。彼は私に目を当て、ゆっくりと一語ずつくぎりながらつぶやく。

〈かわいそに。

ワシは あんたの。

味方やで。〉〔…〕

彼は疲れたように目を瞑り、口もとざす。静かだ。窓の外の夕焼けは蒼褪めて、鳥たちが町の低い屋根の上を、声もなく渡ってゆく。

みかた。

 味方。

護符(おまもり)のことなのかな。きっとそう。

彼のボキャブラリーの抽出しには、タカラヅカの舞台みたいに〈魂は天翔ってきみを守るよ〉なんて言葉もなく、〈永遠の守護神となって、浮世の嵐を防いでやるから〉というセリフの持ち合わせもない。“ワシはあんたの味方や”というのが、彼流のせい一ぱいの、手持ちのセリフなのだろう。

*

*

■ 残花亭日暦│田辺聖子|角川書店|2006 07月│文庫|ISBN/JAN9784041314340

★★★★

《キャッチ・コピー》

93歳の母、車椅子の夫と3人で暮らす多忙な作家の生活日記。仕事と介護をうまくこなし、季節や旅やお酒を楽しもうとあれこれ工夫する中で、最愛の夫ががんになった。看病そして別れ。人生の悲喜が溢れ出す感動の書。

memo

 カモカのおっちゃんの闘病から死までを愛情あふれる筆致で綴る著者70代の日記。

田辺聖子■一葉の恋

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