大泉啓一郎■ 老いてゆくアジア――繁栄の構図が変わるとき
世界全体の高齢化率は、2005年の7.3%から2025年に10.5%、2050年には16.2%へ上昇する。〔…〕
地域別にみると、高齢化率の上昇はアジアで顕著である。インドを除くアジアの高齢化率は、2005年には7.8%とほぼ世界平均の水準にあるが、2025年に13.8%、2050年には23.1%へ急上昇する。
インドを除くアジアの人口の世界に占める割合が、2005年の30.5%から2030年には28.4%へ低下する一方で、高齢人口の占める割合は32.1%から35.1%へ上昇する。
つまりアジアは、今後世界的にみて高齢化が最も速く進む地域となる。アジアは世界で最も高齢者の多く住む地域となり、2030年には高齢人口は欧州の2.5倍となる。〔…〕
少子化、高齢化は、もはや先進国特有の問題ではなく、アジアにおいては日本特有の問題ではない。とくにアジアで出生率の低下は急速であり、今後、急速に高齢社会に向かうことを軽視してはならない。
したがって、日本の持続的発展のシナリオは、このようなアジアの人口構造の変化と整合的でなければならない。
つまり、日本とアジアの関係は、日本がアジアの活力を取り入れるという一方向ではなく、アジアで進む高齢化に対して、支援そして協力するという方向でも努力が求められる。
――第1章 アジアで進む少子高齢化
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■ 老いてゆくアジア――繁栄の構図が変わるとき|大泉啓一郎|中央公論新社|2007年 09月|新書|ISBN:9784121019141
★★★
《キャッチ・コピー》
中国の経済成長に引っ張られ、アジア全体の経済も順調に推移している。だがこれは「21世紀はアジアの世紀」の証明といえるか。楽観論へ警告し、アジア全域で豊かな社会を構築するための方途を提言する。
少子高齢化が加速するアジアの将来は楽観できない――社会保障制度のない国が多いこの地域が、本当の意味で豊かになる方途を探る。
《memo》
キーワード=「人口ボーナス」
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