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2007.12.05

保阪正康■ 自伝の人間学

20071205hosakajidennno

いまわれわれが目にふれることのできる科学者の自伝をパターン分けしてみると、次のようになる。

(1) 科学者として人間の深奥を見つめようとして書かれた作品。自らの人生観も披瀝している作品。

(2) 科学者としての発明、発見への到達のプロセスを書き、合わせて世間に認知されていく軌跡を書いた作品。

(3) 先達として後輩への啓蒙のために書かれた作品。時代への証言を軸にした作品。

(4) 自らの来し方を自らの筆で書かなかった科学者たちの沈黙の〝自伝〞。〔…〕

前述の項目のすべてを網羅している科学者の自伝は、湯川秀樹の『旅人』である。昭和33年に51歳のときに書かれた作品である。〔…〕

自伝、自分史を著わそうとするときに、いくつか目にふれておかなければならない作品がある。『旅人』はその代表的な作品だ。

推敲に推敲を重ねた文体の精緻さや構成の巧みさ、それに表現のこまやかさを学ぶことができる。

いやそういう技巧上のことなどどうでもよく、人は幼児期から肉親や自らの環境とどのような関わりをもつて生きていくのかが、1本の柱となってこの書から汲みとれるのだ。

湯川の自伝が、広く人口に膾炙するのは、科学者の域を越えた筆調をもっているからである。この精緻さが日本人の心情にあうからである。まるで文学作品を読んでいるかのようなのだ。

――「ノーベル賞科学者の晩節」

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■ 自伝の人間学|保阪正康|新潮社|2007 11月|文庫|ISBN9784101333717

★★★

《キャッチ・コピー》

人はなぜ自伝を書くのか? 自己の記録が大好きな日本人は、数多の自伝、回想録を残している。

しかし、その作品群には身を切るような深い自省や貴重な記録性がある一方で、醜い自己誇示もある。実業家、ノーベル賞科学者からスポーツ選手、タレント、そしてテロリストの自伝までをも俎上に載せ、その人間性を徹底的に探究する。自分史を書きたい人も必読。

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