白石公子■ はずかしい
私だって、いつかは部屋に花を絶やすことない、美しいものをこよなく愛する自立した女性になるのだろう、と信じていたのだが、いまだ遠く、花嫌いはずっと変わらない。
ただ公園や通りすがりの家の庭に咲く花をぼんやり眺めるのはいい。ぼんやりという言葉が好きなのは、その瞬間、なにかを忘れていたり、なにかを思い出していたりするからだ。
特に木に咲く花が好きなのは、ごつい枝ぶりで花がよりいっそう可憐に見えるからだろう。季節感漂うまわりの風景や空気、とりまく空間といっしょに距離を持って愛でるのか、私にとって一番安らぐようだ。
花屋で買う花束が苦手なのは、平和や愛や善意や美、疑う余地のないキレイゴトを託したり求めたりすることの人の押しつけがましさに抗っているのかもしれない。結局は人間関係のうとましさにたどりつくのだろうか。
――花ガ嫌イデス
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■ はずかしい|白石公子|白水社|2004年 12月|ISBN:9784560049976
★★
《キャッチ・コピー》
うんうんわかる。こそっと笑える。40代のひとり暮らし。
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