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2008.01.20

小沢信男■ 悲願千人斬の女

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彼女をめぐる男たちの噂は、大名や元勲たちにかぎらない。歌の師匠の井上文雄もその一人だし、尊王の志士や、江戸八丁堀の与力や、深川の幇間や、俳諧の宗匠や、一代で財閥を築いた実業家もいる。

彼女は裕福な町家の娘から、芸者、歌人と転身しつつ、大名から幇間まで四民平等に撫で切って、ついに千人斬を達成したのであるらしい。

ときに明治12年(1879)。彼女はすでに数えの48歳。大願成就を祝って、ご存命の関係者各位にお赤飯をくばったという。堂々と明るくて、佳話であろう。

そもそも千人斬は男の場合で、女の場合は千人信心と申す由。男はしょせん数のみ誇るギネスブックのレベルなのに、女が成就したときは、生ける観世音、神仙の域にとどくのだとか。いかにも。

               ――「悲願千人斬の女」

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■ 悲願千人斬の女|小沢信男|筑摩書房|2004 08月|ISBN9784480818249

★★★

《キャッチ・コピー》

芸者と歌人という二つの顔をもって江戸から明治の時代を生きた女傑・松の門三艸子(まつのとみさこ)。大名や元勲、志士から文人墨客まで、20年間に「千人斬」を果したと言われる彼女の数奇な生涯を描く標題作。そのほか、妾の数だけ支店をつくった牛鍋屋「いろは大王」など、破天荒な人物が次々登場。

memo

 著者は、まえがきで、生れた年にピンをたてて、こしかたを逆に向こうがわへ倒してみると昭和・大正・明治をさかのぼり、幕末へとどく、と書いている。

そうすると、今年芦原将軍が生まれ、松の門三艸子は芳紀18歳、木村荘平はまだ10歳の腕白小僧。稲垣足穂は未生以前で……。

「本書の4人の主人公たちは、そういうわけで、古人ではあれどもほぼ今人のようなもの。逆算的に老けてゆく私が、ある日どこかの町角ですれちがっても、いっこうにおかしくないのでした」

この伝で、わが生年の1941年にピンを立てて向こう側に倒してみると、1874年。明治7年、佐賀の乱が起こり、首謀者・江藤慎平、処刑、享年41。他方、松山で俳人・高浜虚子が、英国ではのちの首相・チャーチルが生れた年であった。明治はonly yesterdayというわけです。

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