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2008.01.30

佐藤健■ 演歌・艶歌・援歌――わたしの生き方星野哲郎

20080130sathoenka

星野哲郎の作詞は、その出だしに特徴がある。「みだれ髪」(船村徹作曲)もそうだ。

髪のみだれに 手をやれば

赤い蹴出しが 風に舞う

その情景が一瞬のうちによく分かる。無人の塩屋崎へ向かって行った女性がどんな女性なのか分からないが、海から吹く風に思わず髪に手をやったのであろう。そうしたら着物のすその赤い蹴出しが風に舞ったというのである。俳句に例えるならば、見事な写生俳句と言うほかはない。〔…〕

「作詞というのはまずその歌の情景を聴く人に連想させなければならないのです」と星野は言う。〔…〕

この「みだれ髪」には名文句が随所に出てくる。

すてたお方の しあわせを

祈る女の 性かなし

辛らや 重たや わが恋ながら

3番には星野が好んで色紙に書く、

春は二重に 巻いた帯

三重に巻いても 余る秋

という言葉があり、

最後は、

暗や 涯てなや 塩屋の岬

見えぬ心を 照らしておくれ

ひとりぼっちに しないでおくれ〔…〕

「ひとりぼっちに、しないでおくれ」。歌詞は、晩年のひばりの寂しさを余すところなく伝えている。星野の演歌はそういう人間の根源的悲しさを優しく包む。

*

*

■ 演歌・艶歌・援歌――わたしの生き方星野哲郎|佐藤健|毎日新聞社|2001 01月|ISBN9784620314785

★★★

《キャッチ・コピー》

星野哲郎という、たぐい稀な作詞家がいる。彼は約45年間に4000曲をはるかに越える作詞をしている。その詩を唄った歌手は数えることができないくらいだ。戦後の歌謡史を彩った歌手の歌は、ほとんど星野の作詞によるといってもいいだろう。その詩の源泉はどこにあるのだろうか。

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