小林照幸■ 野の鳥は野に――評伝・中西悟堂
1分という決められた時間の中で、2千人の観客の何人をカウントできるか? 試しに無人のNHKホールで客席を数えてみた。
「すると、1分間で200人分を数えられることがわかりました。何回か試してみて、誤差はプラスマイナス5人ぐらい。“水面に浮かび、動いているカモを数えたりするのに比べたら、人は動かないから大丈夫、協力できます”と返答して実現しました」
こう振り返る小河原さんにしても、まさか11年も協力するとは思わなかった、という。〔…〕
一方で、「『日本野鳥の会』は双眼鏡を持って、カウンターで鳥の数を数える団体」という“ゆがんだ”イメージを世に定着させた。結局、自然保護のために活動している団体のイメージが損なわれると『日本野鳥の会』の事務局は判断し、平成元年を最後に『紅白歌合戦』への協力をやめる。〔…〕
さて、悟堂は『紅白歌合戦』での会員の姿をどう思っていたのか? ハルノさんに聞いてみた。「正直、父は好きではありませんでしたね。“嘆かわしい。実に嘆かわしい……”と言っていました。“野鳥の会? ああ、あれね”と、カウントする仕草で言われるのは辛かった。揶揄されていたわけですから」
――第7章 悟堂を支えた人たち
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■ 野の鳥は野に――評伝・中西悟堂│小林照幸|新潮社|2007年 08月|ISBN:9784106035890
★★★
《キャッチ・コピー》
「日本野鳥の会」の創始者。「野鳥」という言葉を広め、「探鳥会」を初めて行ない、ヒートアイランド対策のための屋上樹林を考え出した。カスミ網の禁止、空気銃の追放などに尽力し、鳥獣保護法の基礎もつくった。文明大国へとひた走る日本に対し、戦前から自然保護を訴えた孤高のエコロジストの一生。
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