■ 大人が絵本に涙する時│柳田邦男
『おかあさんになるってどんなこと』(内田麟太郎文、中村悦子絵、PHP研究所)
幼いうさぎの女の子ミミちゃんと男の子ターくんが、お母さんごっこをして遊ぶ。
ターくんが「おかあさんになるって、どんなこと」と聞くと、ミミちゃんは「こどものなまえをよぶことよ」「こどもとてをつないであるくことよ」「しんばいすること」と、次々に言い、ふたりはその真似事をする。
最後にターくんが「それから」と聞くと、ミミちゃんが「ぎゅっとだきしめて おもわずなみだがでることよ」と言う。
その時、ふたりのお母さんが呼びに来たので、それぞれにお母さんのところへ駆けていくと、ふたりともお母さんにだっこされたのだ。最後の言葉〈ぎゅっとね〉は、大きな目立つ活字で示される。〔…〕
育児放棄やアタッチメント欠落は、幼い子どもにとっては精神的虐待になるのを、親は気づかない。授乳時に赤ちゃんを見ないでテレビを見ている母親が70パーセント以上もいるということが、虐待の裾野の広さを示している。
『おかあさんになるってどんなこと』の最後を、大きな活字で「ぎゅっとね」という言葉で結んでいるのは、重要なメッセージなのだ。
――「大人が絵本に涙する時」
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■ 大人が絵本に涙する時│柳田邦男|平凡社|2006年 11月|ISBN:9784582833430
★★★
《キャッチ・コピー》
「大人こそ絵本を読もう」と呼びかけを始めて7年。絵本は、ユーモア、悲しみ、思いやりなど、生きるうえで大事なものに深く気づかせてくれる。
豊かな子供の人間形成と潤いのある大人の心の回復のために。柳田邦男が薦める80冊の絵本。
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