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2008.02.28

柳田邦男:編■ 心の貌――昭和事件史発掘

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柳田 しかも尼崎の事故現場は急なカーブでしたから、対向電車は目視もできません。そのまま走ってきたら三河島事故のように衝突して二重事故になっていたでしょう。

畑村 〔…〕車掌がしたことといえば、事故から二分後に携帯電話で指令室とやり取りして、指令室は指令室で何が起こったのか確認しろと言って、最も重要な対向車、後続車を止めろという指示を出していない。その間に他の電車はぎりぎりのところまで来ていた。

柳田 なぜ電車が止まったのか。実は近所の47歳の女性が踏切の非常ボタンを押したからなんです。一般人の女性がとっさに非常ボタンを押せたのに、どうしてJRの職員はできなかったのか。ここが一番の問題でしょうね。

畑村 これはJR西日本にとってみれば、もっとも屈辱的な情報だから認めたくない点でしょう。対向列車が止まった理由としてはもう一つの説で、脱線した電車が信号のケーブルを切断したために周囲の信号が赤に変わって対向列車が止まったというものがあります。

調査報告書にはそのシナリオ通りに書かれるかもしれません。しかし現在の報道を見る限りは、そのご近所の女性が最大の貢献者で、その行動がなければ、三河島事故と同じことになって、もっと多くの犠牲者が出たでしょう。

――第9章「三河島事故――過去に学ばない日本人」 畑村洋太郎+柳田邦男

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■ 心の貌(かたち)――昭和事件史発掘│柳田邦男:編|文藝春秋|2008 01月|ISBN9784163683102

日本と日本人を解き明かす12の事件。

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