佐々木守■ 戦後ヒーローの肖像――『鐘の鳴る丘』から『ウルトラマン』へ
かつてはテレビ番組においてはだいたい午後の7時台が子どもの時間ということになっていた。〔…〕
夕方にはアニメーション番組はいくつかあるが、かつての子どもの時間は現在では家族みんなの時間に変わってしまったのだ。そしてたぶんこういった家族番組を子どもたちも家族と一緒に見ていると思われる。
いいかえれば、現在はだいたい小学校の3、4年生以上からすべての大人までが楽しむ番組が等しくなったのである。かつてのように子ども番組、おとなの番組という区別がなくなったのだ。
子どもの大人化というか、大人の小児化というか、とにかく日本人の大部分が低年齢化してしまったといっていいのではないか。そうした世相が求めるものは家族みんなで楽しめる、軽い、罪のない笑いを誘う作品でしかないだろう。つまりヒーローが求められていないのである。〔…〕
それではと考えてみる。もしここに新しいヒーローが誕生したとすれば、それは日本という国全体に活気を与えることであり、日本そのものが元気をとりもどすことになるのではないか。それはいかにも苦しい逆説ではある。しかし〔…〕
――7 21世紀のヒーロー・ヒロインを考える
.
.
■ 戦後ヒーローの肖像――『鐘の鳴る丘』から『ウルトラマン』へ│佐々木守|岩波書店|2003年 09月|ISBN:9784000236379
★★★★
《キャッチ・コピー》
『ウルトラマン』、『柔道一直線』、『アルプスの少女ハイジ』など数々の人気テレビ番組を手がけた脚本家による、体験的「子ども番組」史。さまざまな出会いを通じて放送作家になるまでの道のりと、懐かしいヒーローたちがどのように創られたかを語り明かす。
《memo》
戦後子ども番組史として貴重。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント