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2008.02.18

長谷川郁夫■ 本の背表紙

20080218hasegawahonno

毎日、どこかでかならず何杯かは珈琲を喫む。しかし、珈琲を味わうに通した季節は初冬が一番だと思う。冷え込んで乾燥した空気のなかに香りたつのが嬉しいのだ。

歳時記にはないが、珈琲は冬の季語である、と断固主張したい。熱帯の恵みを四季ある国の冬に味わう、と思えば地球規模の贅沢な気分にもなるではないか。

と、わが説を強調しても、毎朝、食後に豆を挽いて珈琲を沸かしていた小沼丹さんは、きょとんとして首を傾げるだけだった。あえてベスト・シーズンをと問われれば、初夏だね、と答えたことだろう。

随筆のなかで珈琲に繰りのある季節は、いつも五月の頃だからである。〔…〕

私は自説を曲げるつもりはない。寒い朝、冬木の庭に小鳥が遊ぶのをガラス戸越しに眺めながら、金属の把手を回す小沼さんの、あの憮然たる表情も想像裡に懐かしく浮かぶからである。 

――「珈琲-小沼丹」

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■ 本の背表紙│長谷川郁夫|河出書房新社|2007 12月|ISBN9784309018454

★★★

《キャッチ・コピー》

編集者・出版人としての30年間、文学が生まれる瞬間に立ち会い、親しくその息吹に接した今は亡き作家たち。四季の移ろいを丹念に辿り、忘れがたい言葉をいまに蘇らせる。回想と鎮魂の文藝ごよみ。

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