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2008.02.23

池内紀■ 二列目の人生 隠れた異才たち

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マナスル踏査隊の一員として、はじめてネパールに入ったときのことだが、テント泊りをかさねたあげく、高度700メートルの低地まで下ってきた。小屋で夕食を終え、寝袋に入り、ランプを吹き消した。外は雨。

「その時突然、雨の音の中に、道路の向い側の小屋から女の声で、ソロの歌が聞こえてきた」

一節が終ると、自分たちが泊っている小屋の中から、若者がやはり一人で声をあげて一節歌った。雨が降りつづく夜を通して、二人のかけ合い歌がいつまでもつづいていた。〔…〕

「歌垣」は照葉樹林帯の中で生まれた、ゲーム性をもつ恋愛が原形ではないだろうか。それが各地で変形し、変遷をとげた。とすると、『古事記』や『万葉集』の時代にも「歌垣」が強い生命力を持っていたのではあるまいか。歌をかけ合うなかでは男女とも性的自由の世界であれば、特権者だけにかぎられず、民衆のだれにもあったこと。

『万葉集』が天皇から乞食までの歌を集めているのは、そのせいであって、そんな伝統の上に洗練されて生まれたのが、今につたわる『万葉集』ではなかったか。

――中尾佐助 種から胃袋まで

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■ 二列目の人生 隠れた異才たち│池内紀|晶文社|2003 04月|ISBN9784794965660

★★★

《キャッチ・コピー》

どんな分野にも歴史に埋もれた天才がいる。人を押しのけるのが苦手。あるいは我が道を貫くため、時流に背を向けることも厭わない。彼らは、華やかな名声とともに語られないが、人々の記憶には確かに存在する。

名声より大切なものは何か?それを追い続ける情熱はどこからくるのか?真の「一流人」は、時代が変わってもゆるがない。現代を爽快に生きるヒントが見えてくる伝記エッセイ。

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