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2008.03.13

高橋昌明■ 平清盛 福原の夢

20080313takahashitaira

後白河が海幸・山幸説話におのれのメッセージを託そうと思ったとき、『源氏物語』が脳裏になかったはずがない。

というのは、『源氏物語』前半の山場である光源氏の須磨流離講は、同説話を典拠にしており、ヒコホホデミノミコトが光源氏、ホノスソリノミコトが源氏の兄の朱雀帝、竜宮の竜王が明石入道、豊玉姫が明石の君の人間像に換骨奪胎されている、と考えられているからである。〔…〕

以上の諸点から偶然の一致以上の確率で、現実の清盛・平家のありようと、『源氏物語』ストーリーの相似性を確認できる。

この観察に大過なければ、光源氏の明石の君にたいする感情同様、絵巻の裏には後白河の清盛や徳子に対する、一面冷淡で皮肉めいた感情が隠されていた、と読むことが可能であろう。〔…〕

ここまで書いた勢いに乗れば、清盛自身が自らを光源氏に擬していた、との想定すらあり得るだろう。

ともに皇胤で太政大臣の経験者であるし、清盛も須磨にほど近い福原に自発的意志で移った。光源氏は琴(中国渡来の七絃、無柱の琴)を須磨・明石に携えたが、清盛は筝の琴(中国渡来の十三絃)を愛好したなどなど。

――第3章 日宋貿易と徳子の入内す 6 後白河と清盛と『源氏物語』

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■ 平清盛 福原の夢|高橋昌明|講談社|2007 11月|ISBN9784062584005

★★★

《キャッチ・コピー》

中世史の泰斗が満を持して放つ清盛学の決定版!

平氏系新王朝を夢見てあらゆる手段を尽くした男、清盛。なぜ福原でなければならなかったのか?『源氏物語』須磨・明石巻との相似性、六波羅幕府と鎌倉幕府成立との連続・不連続、福原の地形的意味、遷都の政治的意味と抵抗勢力との角逐など、第一人者ならではの多角的アプローチで、誰も書かなかった大いなる野望に迫る。

memo

清盛は「印南野を京にすべし」と言った。しかし、印南野は「水無きによりて叶ひ難し」ということで立ち消えになった、という。

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