小野俊太郎■ 日経小説でよむ戦後日本
もともと、どこまでも実社会を意識した新聞である。「諸君。学校出たら、勉強しよう」というのが、1982年のキャッチフレーズだった。
第1面もメッセージ性の強い紙面作りをしている新聞である。だからこそ、今もあえて載っている日経小説は、株の日経平均とおなじくらい注目すべきだと思う。
むろん、瞬間風速的な経済動向を示す指標となりはしない。だが、財務内容をきちんと調べ、企業の将来像を措いて株を取得するのが、まっとうな株主だとすると、日経小説がしめしてくれるのは、日本社会の長期的な動きのほうだろう。
「われらはどこから来たのか、いったい何者か、そしてどこへ行くのか」という根源的な問いに、小説家たちが精一杯の答えを出してくれている。
もちろん情報をどう判断するかは読者に任されている。企業のバランスシートや日銀短観や『会社四季報』とはひとあじ違った読みごたえがあるのだ。
もしも、日経小説から日本社会の健全度や抱える困難が読みとれるなら、「日本株式会社」への投資家になったつもりで、この興味深い事例研究を読んでみてもいいではないか。
――「はじめにー日経小説とはなにか」
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■ 日経小説でよむ戦後日本│小野俊太郎|筑摩書房|2001年 04月│新書|ISBN:9784480058911
★★
《キャッチ・コピー》
日本経済新聞の連載小説が、『下天は夢か』や『失楽園』のような大ベストセラーを生み出してきたのはなぜだろうか。それはこの新聞が、戦後日本を支えてきた経済システムの激変を最もジャーナリスティックに映し出してきたからである。
変容を迫られる企業社会に「日経小説」は今後ますます「日経平均」と同じくらい日本経済の現状と未来をしめす手がかりとなるのである。
《memo》
牽強付会。
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