水道橋博士■ 本業
さて、タレントと名乗った瞬間より、源泉徴収される、この「有名税」――。そのシステムは、タレントの地位がビッグであればあるほど累進課税されるものである。
しかし、この一方的に搾取される「有名税」によって、大衆に産み出された「偶像」と本人がみんなにこう見て欲しいと願望する実像とのギャップが生じるのも、これまた当然のこと。
そのギャップにこそ、タレント本出版のモチベーションがあるのではないか。
そこで「有名税」として片づけられたスキャンダルに、自らペンを執ることにより、必要経費控除の機会を与え、独り歩きしてしまったパブリック・イメージに還付請求を行う作業こそが、タレント本なのではないだろうか。
これは、一般のサラリーマンには無縁なことだが、個人事業主が毎年、否が応でも手間隙かけて行う、税金の申告のようなものとも言える。
よってタレント本とは、「膨大で払いきれない有名税に対するタレント本人による青色申告書」であり、自ら世間から換算して欲しい、自分への価値そのものなのだ。
つまりタレントの『本業』とは、芸能人の「本分」であり、芸人の「本寸法」と言いたいのである。
――序章「タレント本とは?」
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■ 本業│水道橋博士|文藝春秋|2008年 03月│文庫|ISBN:9784167717704
★★★★
《キャッチ・コピー》
矢沢永吉『アー・ユー・ハッピー?』から劇団ひとり『陰日向咲く』まで、タレント本50冊+アルファ、怒涛のほめ殺し。
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