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2008.03.14

四方田犬彦■ 日本映画と戦後の神話

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1954年、日本がサンフランシスコ講和条約によって独立を回復して2年後、長い労働争議を終えてようやく正常な制作活動に戻った東宝は、映画史上に残る2本のフィルムを相次いで制作した。

黒澤明の『七人の侍』と本多猪四郎の『ゴジラ』である。いずれもが国内のみならず国外でもヒットし、それ以来サムライと怪獣は、日本映画を代表する2つのジャンルとして神話化されることになった。〔…〕

本多猪四郎と黒澤明の友情は、生涯の終わりまで続いた。黒澤はこの旧友に、『野良犬』(1949)での横浜の隠し撮りシーンに始まって、後期には少なからぬ作品で演出協力を求めた。『影武者』『乱』『夢』といったフィルムには、確実に本多が演出した痕跡が窺われる。

批評家たちはしばしば本多を子供相手の娯楽映画の職人監督として、批評の対象にすらせず、逆に黒澤を国家的誇りだといって称賛した。もっとも深い映画的信頼関係に結ばれていたこの2人にとって、そうした評言はどうでもいいことであった。

来たるべき日本映画史は、本多の怪獣演出と黒澤のシェイクスピア解釈とを同じ地平のうえに乗せて論じるところから、執筆されなければならない。

――「ゴジラとその後裔」

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■ 日本映画と戦後の神話│四方田犬彦|岩波書店|2007 12月|ISBN9784000242547

★★★

《キャッチ・コピー》

戦後、さまざまな神話を構築してきたヒーローたち―力道山、ゴジラ、山口百恵、昭和天皇、寅さん、ヨン様。

彼らに熱狂したわれわれは、いったい何を見ていたのか。何が「国民的」神話を作りだすのか。観客が欲したもの、作り手が意図したもの。映画がもつ「神話」形成という装置に警鐘を鳴らしつつ、「神話」解体をめざし多様な表象に迫った、日本映画への注目のアプローチ。

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