藤原智美■ 暴走老人!
ケータイとネットワーク時代におけるコミュニケーションの特徴は、それが身体から離れ電子の世界へと足場を移動させていることにある。
かつて対話といえば文字化できる言葉だけでなく、その口調や、身振り手振り、表情といった身体運動によって成立するものだった。が、ケータイ、ネット上の対話はそうした身体性を必要としない。〔…〕
メディアが喧伝する社会像とは違って、私には人々が奇妙に静まりかえっているように思われる。人と人とのかかわりが、しだいに肉声や表情や身振りや、そして体臭や体感から離れていこうとしているからだろうか。その代替としてネットワークがあり、人と人との関係が見えにくくなっているからか。〔…〕
そのなかでいま、新老人たちが暴走している。彼らはやかましい。吠える。体臭を放ち、声を荒らげる。暴力をふるう。だがそれは、失われつつある私たちの身体性への、ひとつの抵抗なのかもしれない。
――第1章「時間」 3変容する時間感覚
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■ 暴走老人!│藤原智美|文藝春秋|2007年 08月|ISBN:9784163693705
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《キャッチ・コピー》
待てない、我慢できない、止まらない―「新」老人は、若者よりもキレやすい。現代社会に大量に生み出される孤独な老人たち「暴走」の底に隠されているものとは?老人たちの抱えた、かつてない生きづらさを浮き彫りにする。
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