石原慎太郎■ 老いてこそ人生
例えば西洋医学の始祖ともいわれるヒポクラテスの昔から、東洋においても実は同じことがいわれてきているのですが、古今洋の東西で人体、健康の不変の真理として、人間にとって、いやすべての動物にとっての最大最高の医者は二人います。
一人は熱。もう一人は断食です。
発熱は痛みと同じように一種のアラームリアクションであり、かつまた絶妙の癒し手でもある。時間はかかるかも知れないが、熱が出たら慌てずそのまま放置して休んでいると大抵の病気は治ってしまう。〔…〕
確かに犬にせよ何にせよ、動物はどこか体の調子の悪い時にはじっとして食べようとはしません。どう考えてもそれが体の理にかなっているのに、人間は何のためにか自らに強いても食べてしまう。〔…〕
自分で自分の便や体臭を嘆いでみて初めて、いかに自分が日頃の生活で人間にとっては異常で有害な物を摂取してきていたのかがわかりました。断食こそ名医といわれていた昔とて同じことだったのだろうが、この現代となればいっそうのことでしょう。
――第9章 古今、二人の名医
.
.
■ 老いてこそ人生│石原慎太郎|幻冬舎|2003年 06月│文庫|ISBN:9784344403826
★★★
《キャッチ・コピー》
老いは迎え討て。老いゆく者への、鮮烈なメッセージ。
「どんなドラマでも最後の幕が一番実があり感動的なものだ」。忍び寄る死の影に怯えつつ、著者は老いをどう受け入れ、乗り越えようとしているのか。充実した老いを生き抜くための黄金の全21章。
| 固定リンク
コメント