田城明■ ヒロシマ記者が歩く 戦争格差社会アメリカ
「……特にブッシュ政権になってから、軍への入隊勧誘のための露骨な教育政策が取られるようになった」
カストロさんが中でも問題にするのは「どの子も後に残さない」(No Child Left Behind)という一風変わった名のついた法律だ。
9・11米中枢同時テロ事件から4カ月後の2002年1月に成立した。法の名前だけで判断すると、学習に遅れのみられる生徒の指導に力を入れ、だれもが取り残されることのない教育を目指しているかのような印象を受ける。
だが、実態は教育関連会社が作成した全国標準テストなどを定期的に実施して学校間の競争意識を高め、ひいては子どもたちの学業レベルを高めようというものである。
「ただそれだけなら『名前に偽りあり』という指摘だけで済むかもしれない。ほかの国で実施されていることでもある」。カストロさんは厳しい口調で続けた。「問題は連邦政府の助成金を得るために、高校は生徒の名前、住所、電話番号、成績まで最寄りの軍リクルート事務所に提出しなければならないことなんだ」
――Ⅲ 民生を圧迫する軍事費と格差社会 3 米軍入隊勧誘
.
.
■ ヒロシマ記者が歩く 戦争格差社会アメリカ│田城明|岩波書店|2007年 11月|ISBN:9784000236737
★★★
《キャッチ・コピー》
単身全米各地を歩き、心身の深い傷が癒えぬイラク帰還兵や亡くなった兵士の遺族、健康被害に苦しむ9・11のヒーロー、いまだ故郷に帰れぬハリケーン・カトリーナ被災者、貧困にあえぐ若者らの声を丹念に拾い、一方で政権の圧力に抗して反戦の灯火を掲げ、良心を貫く市民たちの姿も描く。アメリカの“今”を伝える迫力のルポ。
|
| 固定リンク
コメント