大塚秀之■ 格差国家アメリカ――広がる貧困、募る不平等
カジノといえばラスベガスやニュージャージー州のアトランティック・シティーの名を思い浮かべる人が多いだろうが、いまやカジノは、デトロイトやセントルイス、シカゴ周辺といった中西部町大都市とその周辺でもあいついで開設されている。
財政的に逼迫した州や市町村が、税収増と雇用創出を目的に窮余の方策として編み出したもので、同じことが南部各地で営まれても不思議ではない。
2004年の4月には、テキサス州のペリー知事が特別議会を招集して、「悪徳税(シン・タックス)」の増税や新設をはかろうとして大きな話題を呼んだ。
「悪徳税」とは、酒やたばこ、ギャンブルなどの好ましくないとされる行為に課される税金の通称であるが、ペリー知事は、裕福な住民の利益のために公立学校運営の基本的財源である固定資産税を大幅に削減する一方、そこに生じる税収不足を、合法的ギャンブルの拡大、酒税・たばこ税の増税、トップレスバーへの5ドルの入場税の新設などで埋め合わせようとしたのであった。〔…〕
テキサス州その他の「悪徳税」にしろミシシッピーやルイジアナにみるカジノからの収益にしろ、そうしたところからの税収が州財政にとって貴重な財源となるというところに、アメリカ南部の、そして多くの大都市の貧しさ、そして苦悩がありありと示されている。アメリカとは、何と貧しい国なのだろう。
――第2章 貧しいアメリカ
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■ 格差国家アメリカ――広がる貧困、つのる不平等│大塚秀之|大月書店|2007年 09月|ISBN:9784272230198
★★★
《キャッチ・コピー》
現代アメリカ社会は、資本主義の「栄光」と悲惨さを映し出す格好の鏡である。
アメリカにおける格差と貧困、不平等とその由来を、資本主義の原理的側面から論じ、アメリカ資本主義の現段階についての認識と、非ヨーロッパ系出身者に対する人種差別の2点を考察する。
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