高橋敏夫■ 時代小説に会う!――その愉しみ、その怖さ、そのきらめきへ
わたしたちは、歳とともに、「満足やよろこび」のほうにむかいたいと願いながら、しかし、すこしずつ「貧困や病苦」といった負の事態へ、「失意や絶望」などの負の感情へと傾斜していく。〔…〕
そして、「満足やよろこび」でいくらおおいかくそうとしても、それらを消してしまうわけにはいかないと認めたとき、
さらに、それらをうけいれたむこうにしかほんとうの「満足やよろこび」はみえてこないと覚悟したとき、
加えて、日常生活のなかでそれをナマのまま存分に語り合うことの難しさを知ったとき、わたしたちは確実に、時代小説と出会わねばならぬ場所に踏み入れている。
時代小説は、わたしたちに、それぞれの負の感情をたしかめるようにしむける。
人を孤立させるためにではなく、負の感情をとおして他の人々とのつながりを認めさせるために。〔…〕
わたしたちには、時代小説と出会わねばならない時期が、たしかにあるのである。
――5 おわりに――かならず人は時代小説に出会わねばならない
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■ 時代小説に会う!――その愉しみ、その怖さ、そのきらめきへ│高橋敏夫|原書房|2007年 12月|ISBN:9784562041367
★★
《キャッチ・コピー》
潮流は司馬遼太郎から藤沢周平へ……英雄豪傑の活躍から下級武士や市井に生きる人々のかけがえのない日常の哀歓へ。多くの作家の作品に、現代人の心と響きあう、新たな時代小説の世界、豊穣多岐な面白さ楽しさを読み解く読書案内。
《memo》
文章も中味も元気がいいというか荒っぽいなぁ。
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