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2008.03.08

加藤仁■ 社長の椅子が泣いている

20080308kathosyatyo

それから1年後のある日、突如として日本楽器本社では臨時取締役会が招集され、河島博は社長を解任された。社長在任の期間は、3年余りにしておわった。

戦後の経済復興、高度成長、海外進出、円高、石油ショックなど河島は幾多の転換期を駆けぬけ、愚直なまでに身も心もビジネス活動に捧げてきた。冷静な経営状況の認識、微に入り細を穿つ論理的な構想のもとにくだした大胆な決断、速やかな行動など、河島が最良のサラリーマン経営者の一人であることは、敵対する者もみとめている。

しかし、そのビジネスマン人生を否定しかねない決定がくだされたのである。一夜にしてどん底に突き落とされ、社会的に抹殺されかけた理不尽について、その胸中を語りたい気持ちもあったにちがいない。

しかし解任直後、兄・喜好はこう助言した。

「理不尽な処遇であっても、恨みつらみを公表すると、博の値打ちを下げることになる。ここは、沈黙は金と思え。いまは自分だけの覚書に書き留めておけ。いつか発表する日がくるだろう

弟も同感であり、兄の言葉を守りぬいた。公の場で怒りをぶつけたり、反論したりするようなことはいっさいせず、沈黙を貫きとおした。

河島博は、だれにも見送られかことなく、妻と一人娘とともに浜松を去った。

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■ 社長の椅子が泣いている│加藤仁|講談社|2006 06月|ISBN9784062115735

★★★★

《キャッチ・コピー》

46歳で日本楽器製造(ヤマハ)社長に抜擢、突然の社長解任。中内功の三顧の礼で、ダイエー副社長に。倒産企業・リッカーを再生させた男、河島博。全身全霊、24時間経営を考えぬいたビジネスマンの半生を描く、傑作評伝。

memo

 兄はホンダの社長、弟はヤマハの社長。当時騒がれたことがありました。著者・加藤仁は「定年」専科とおもっていたら、こんなすぐれたノンフィクションを書く人だった。

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