小松左京■ SF魂
酒を飲みながらでも、麻雀の二抜けの時でも、会議の司会をやっている時でも、締め切りがあれば原稿を書いた。
一番すごかったのは、岩波書店の『世界』から一度だけ原稿を頼まれた時。内容はもう忘れてしまったが、忙しくてギリギリで書いていたら電話がかかってきて、もう下版しますからとにかく航空便で送ってください、と言う。
まだ60年代の中頃で深夜便があったから、女房がタクシーを呼んできて、一緒に乗り込んで書き続けたのだが、まだ完成しない。
待合室でずっと書いても終わらない。
そしたら女房が切符を買ってきて、「飛行機の中で書いて」と送り出してくれた。機中でようやく書き終えて、羽田で航空便を待っていた岩波の編集者に渡したら、「原稿と一緒に、筆者が飛んできたのは初めてです」と言われた。
――第2章「SF界のブルドーザー」と呼ばれた頃
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■ SF魂│小松左京|新潮社|2006年 07月│新書|ISBN:9784106101762
★★★
《キャッチ・コピー》
私が日本を沈没させました…。「日本沈没」でベストセラー作家となった日本SF界の巨匠が語る、その黄金時代、創作秘話、SFの真髄。今なお輝きを失わない作品群は、どのような着想で生まれたのか。波瀾万丈のSF半生記。
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