宮崎哲弥■ 新書365冊
学者が書いたエッセイ風の入門書や人生論は、新書の大きなジャンルの一つですが、昔は背後にしっかりした学問の体系があり、それをあえて表に出さずに易しくものを解き明かすというスタンスだったわけです。
しかし最近は、そういう学問的基礎もなしに、単なる思い付きを書き連ねたような本が多い。
新書は衰退しつつある出版産業の最後の砦、という面もあったと思うのですが、過当競争でそれも危うくなっている。最近の新書は読み捨ての単行本と扱いが変わらない。由々しき事態です。
―― 宮崎さんにとって、新書とはなんですか?
新書というのは、世界にも稀な大衆啓蒙メディアで、こんなに気軽に、広範な知識に触れられる日本人は幸せだと思います。
だから出版社も、もっと新書というメディアを大事にして欲しい。
私にとって新書というのは、何よりも既存の価値観を揺さぶられる、そういう体験をもたらしてくれるものです。そういう新書を、どんどん出して欲しい。既存の知識を、安易にコピペしたり、思い付きをただ繋げたような新書は勘弁してもらいたい。
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■ 新書365冊│宮崎哲弥|朝日新聞出版|2006年 10月│新書|ISBN:9784022731067
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《キャッチ・コピー》
毎月60~100冊を読み続ける斯界きっての“新書読み”宮崎哲弥の連載(月刊誌『諸君!』)を書籍化。「教養」「政治」「経済」など、ジャンル別ベスト新書の紹介に加え、新書ブームの現状を読む新論考も収録。「新書ガイド+新時代の教養案内」をお楽しみください。
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