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2008.04.13

吉田修一■ 悪人

20080413yoshidaakunin

「アンタ、大切な人はおるね?」

佳男の質問に、ふと鶴田が足を止めて、首を傾げる。

「その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人たい」

佳男の説明に鶴田は黙って首を振り、「……アイツにもおらんと思います」と呟く。

「おらん人間が多すぎるよ」

ふとそんな言葉がこぼれた。

今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。

失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」

*

*

■ 悪人│吉田修一|朝日新聞出版|2007 04月|ISBN9784022502728

★★★★

《キャッチ・コピー》

女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。

memo

 乙川優三郎の現代版のような……、せつなくなる。

吉田修一・文/佐内正史・写真■ うりずん

吉田修一■ 7月24日通り

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