堀江義人■ 天梯のくにチベットは今
北京五輪の大会マスコットに「蔵玲羊(チベットカモシカ)」が選ばれたとのニュースが飛び込んできた。
魚、パンダ、聖火、ツバメとともに五体の「福娃」(幸せを呼ぶ赤ちゃん)の一つに入った。あまたの候補の中でダークホースとされた蔵玲羊が、ネット投票で人気トップの中華龍や孫悟空、トラなどの強豪を抑えて、入選を果たしたのは正直、意外に思えた。
マスコットをめぐるネット論争で蔵玲羊に反対する意見が目に止まった。いわく「中華民族は勇猛果敢な民族精神を必要としている。21世紀の今、5千年の文明史を擁する偉大な民族が自らのイメージをヒツジに託すのはいかがなものか」。
この投書子は蔵玲羊が逆境のなかでたくましく生き抜く姿をご存じないらしい。
中国のチベット支配に反対する海外のある団体からは「チベットカモシカは中国を象徴する動物ではない。中国政府の政治的プロパガンダだ」との批判の声があがる。
北京五輪を盛り上げる大役を背負った蔵玲羊のマスコット「迎迎(インイン)」は周囲の騒々しさにさぞかし戸惑っているに違いない。
チベットの人たちが置かれた境遇に似ているようにみえる。
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■ 天梯のくにチベットは今|堀江義人|平凡社|2006年 03月|ISBN:9784582833171
《キャッチ・コピー》
鉄道、自然環境、宗教、政治、風俗慣習、食文化…さまざまな視点から知る、最新チベット事情。
《memo》
被災地の「伝説」……2008年5月28日朝日新聞
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