黒川博行■ 大阪ばかぼんど――ハードボイルド作家のぐうたら日記
よめはんの叔母さんが亡くなった。享年61。〔…〕
叔母さんは生涯独身だった。大手製鉄会社の役員秘書を定年まで勤めあげ、老後の生活には充分な金を貯めて、さてこれから優雅なリタイア生活を送ろうとしたときにガンが見つかったのである。〔…〕
「独身というのもわるうはないけど、こんなときはつらいな」よめはんにいうと、
「どうせ死ぬときは独りなんやから、しかたないわ」という。「あと2、30年も経ってみ、日本人の半分は独身で、遺伝子を残さんままに死んでいくんや」
そういえば、わたしの知り合いの30代、10代は3分の1近くが結婚していない。〔…〕いまどき男と女が結婚しても女が専業主婦になる例は少なく、生活の負担はまちがいなく女のほうに大きくのしかかる。〔…〕
男は女より精神年齢が低く日々のルーティンに眼を向けようとしないから、幼いときは母親に依存し、結婚してからは妻に依存して生きようとする。
未婚の女性にはわるいが、結婚生活というものは女にとってのマイナスのほうが大きく、悲しいかな、いまの日本社会ではこれが現実だといわざるをえない。
――Ⅱ 恐妻に慄く
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■ 大阪ばかぼんど――ハードボイルド作家のぐうたら日記│黒川博行|幻冬舎|2008年 03月|ISBN:9784344014862
★★
《キャッチ・コピー》
連戦連敗の博打、空恐ろしい妻、軋むカラダ、愛らしいペット、トラブル続きのマイカー…。読めば抱腹絶倒、読後に共感。ムクムクと元気が湧いてくる、痛快洒脱なエッセイ集。流行作家の泣き笑い生活が満載。
《memo》
夕刊フジ連載。このコラム、サブタイトルにあるように日記であって、全編オチがない。
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