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2008.05.19

鴻巣友季子■ 翻訳のココロ

20080519kounosuhonnyaku

翻訳もおなじような気持ちで日々やっている。無理に味を付けぬよう、砂糖壷にはむやみに手を出さず、よけいな灰汁抜きはできるだけ控え、食べやすいようにと勝手に皮をむいたりせず。

多少舌触りがわるくても、えぐくても、食べにくくても、奥にあるうまみは伝わってくるものだ。本当のおいしさには、そういう衝撃つまり「速さ」がある。〔…〕

瞬時に伝わる「なにか」と、噛むほどに増していく「うまみ」。

いいものは、きまって速くて遅い。

たまに「翻訳する作品はどうやって決めるんですか」と訊かれることがあるが、決め手はこういう「速さ」と「遅さ」だ。難しいことを勉強しなければ本質が理解できない作品は、速さが足りない。一読したときは楽しめてもその後の深みがない作品は、遅さが足りない。

しかし、こういう仕事をしているとありがたいことに、「どこまで行ってもすごいもの」につぎつぎと出逢う。自分の見つけたそんな宝物を、ホンヤク者はひとにしゃべりたくて仕方がないのだ。ざっとあらすじでも説明すればいいものを、苦労して苦労して一語一句まで伝えながら。

それがきっと翻訳のココロなのだろう。

――あとがき  かぼちゃの性根、海鞘のココロ

*

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■ 翻訳のココロ|鴻巣友季子|ポプラ社|2003 08月|ISBN9784591077559

★★★

《キャッチ・コピー》

ホンヤクとかけて、なんと解く?『嵐が丘』新訳の裏話も満載のエッセイ。

金原瑞人■ 翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった

宮田昇■ 新編戦後翻訳風雲録

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