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2008.05.01

石川九楊■ 縦に書け!――横書きが日本人を壊している

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一部の子どもたちはチャットで、相手に対する攻撃や非難などのやりとりをしていますが、それをもし手紙で書いたとしたら、どうなるでしょうか。

書きながら、「ここまで書いたら、相手が傷つくかもしれない」とか「ここまで本気で言っていいのだろうか」とか、いろいろ考えるでしょう。

それでも、なお書いてしまったとしても、手紙を畳んで封筒に入れて、さらに封筒に宛名を書き、切手を貼って投函するまでのプロセスでブレーキがかかることもあります。〔…〕

しかし、チャットやメールでは、「殺すぞ」とキーボードを叩くこと自体、書くときのようなエネ〜ギーは要らず、のみならず軽い遊戯感覚で十分であり、送るときに自制の働く暇がありません。〔…〕

他者との対話や会話はとても大切です。そのための訓練も必要です。しかし、対話や会話で最も重要なのは、「何を話すか」ではなく、「何を話さないか」、「何を話してはいけないか」をわきまえることです。書くことも同様で、「何を書かないか」「何を書いてはいけないか」が大切です。

現在の教育では、「相手が傷つくことは言ってはいけない」というところに落ち着きそうですが、

そうではなく、「自らの品位を落とす」ことは口にすべきではなく、いったん留保すべきです。

「自らの品位を落とす」発言とは、人間がお互いに力を合わせて、ともに生きていくという目的を損なう言葉を指します。

――第1章 言葉が力を失った社会

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■ 縦に書け!――横書きが日本人を壊している│石川九楊|祥伝社|2005 06月|ISBN9784396440053

★★★★

《キャッチ・コピー》

日本語の核心は“縦書き”にあり!古来、「天」から「地」へ向かう重力と格闘しつつ、縦に文字を書き、言葉を紡ぐことによって日本人の精神は醸成されてきた。

日本語を横書きにすることは、英語(アルファベット)を縦に綴るのと同じ「愚」である。だが、その愚行が世を席捲したいま、日本人の精神は荒み、崩れつつある。

その最大の犠牲者は、言葉を習得途上の子どもたちである。パソコン、ケータイ=ネット社会に狙い撃ちにされる彼らは、日々見えない血を流している…。

「改革」の名の下に暴走する現在の日本を、人間と言葉の根源から見据えた警世の書。気鋭の論客が放つ緊急提言。

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