なべおさみ■ 病室のシャボン玉ホリデー――ハナ肇、最期の29日間
「どれだけ生きられますか」
弟子の私ですら、身を切る様に痛い質問なのだから、身内の者にとっては実に幸いだろうと思った。それでもせざるをえなかったはずだ。先生も、ここに至っては掛け値ない答えを出しただろう。私にも同じだろうと待った。
北本先生の目に、流れ星が走った。
無念ですよと静かを光が伝えていた。
「一・七五日……」
「いってん、ななごうにち?」
私は数秒、戸惑って、
「二日は生きられないって事ですね」
「………」
〔…〕明日かもしれまい、明後日かもしれまい。
おやじは消えるのだ。
――第一章 おやじの我儘
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■ 病室のシャボン玉ホリデー――ハナ肇、最期の29日間|なべおさみ|文藝春秋|2008年 02月|ISBN:9784163699301
★★
《キャッチ・コピー》
ザ・ピーナッツ、布施明らが病室で演じる「シャボン玉」のコント。そして「スターダスト」のメロディーが優しく流れ出す…。1993年8月13日~9月10日。ハナ肇、肝臓癌との壮絶な闘いの記録。
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