堤未果■ ルポ貧困大国アメリカ
国内では経済的状況を含む個人情報が本人の知らないところで派遣会社に渡り、その結果、生活費のために戦地での勤務につき死亡する国民の数も急増する一方だ。
彼らの動機は愛国心や国際貢献といったものとは無縁であるとみなされるため、戦死して英雄と呼ばれる兵士たちと違い、むしろ「自己責任」という言葉で表現される。
グローバリゼーションによって形態自体が様変わりした戦争について、パメラは言う。
「もはや徴兵制など必要ないのです」
「政府は格差を拡大する政策を次々に打ち出すだけでいいのです。
経済的に追いつめられた国民は、黙っていてもイデオロギーのためではなく生活苦から戦争に行ってくれますから。
ある者は兵士として、またある者は戦争請負会社の派遣社員として、巨大な利益を生み出す戦争ビジネスを支えてくれるのです。大企業は潤い、政府の中枢にいる人間たちをその資金力でバックアップする。
これは国境を超えた巨大なゲームなのです」
――第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
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■ ルポ貧困大国アメリカ|堤未果|岩波書店|2008年 01月|新書|ISBN:9784004311126
★★★★
《キャッチ・コピー》
貧困層は最貧困層へ、中流の人々も尋常ならざるペースで貧困層へと転落していく。急激に進む社会の二極化の足元で何が起きているのか。追いやられる人々の肉声を通して、その現状を報告する。弱者を食いものにし一部の富者が潤ってゆくという世界構造の中で、それでもあきらめず、この流れに抵抗しようとする人々の「新しい戦略」とは何か。
《memo》
なるほど、金持ちは戦争に行かなくてすむように、徴兵制を廃止したのか。
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