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2008.06.26

松浦寿輝■ 散歩のあいまにこんなことを考えていた

20080626matsuurasanpo

思うに、ハレの儀礼として年2回執り行われる芥川賞選考は、紅白歌合戦などと同様に一種の村祭りのごときものであり、その基盤をなしているのはきわめて土俗的・前近代的な心性である。〔…〕

だから、言うまでもないことながら芥川賞は文学とは無縁である。

実際、客観的に見て、過去65年の芥川賞の受賞作で本当に傑作と呼べるのは大江健三郎の「飼育」や古井由吉の「杏子」など数えるほどにすぎず、大部分は他愛のないものばかりだ。

そもそも選考委員にしたところで、小説を読む力があるとはとうてい思えない二流三流の作家が複数紛れこんでおり、彼らに最良の候補作を選べる能力があるなどとは誰も信じていない。〔…〕

今日読み返してみて「太陽の季節」がきわめて下手糞に書かれた風俗小説の小品以上のものでないのは誰の眼にも自明だろう。しかしそんなこととは無関係に、「芥川賞作家」の最良のモデルはなお依然として石原慎太郎でありつづけている。

――「芥川賞という祭礼」

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■ 散歩のあいまにこんなことを考えていた|松浦寿輝|文藝春秋|2006 04月|ISBN9784163680309

《キャッチ・コピー》

ぶらぶら歩きの途中で横道へ入り込む愉しみ。煙草にはマッチで火をつけたい。午後の早い時間のビアホール。小動物が出てくる物語の魅力…。ネクタイを緩めて語る、猫と本と散歩への愛に満ちたエッセイ80余篇を収録。

memo

 芥川賞受賞作家が書くことはタブー()の世間の“常識”としての芥川賞について書いている。

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