マイケル・ダナム/山際素男:訳■ 中国はいかにチベットを侵略したか
1949年10月、毛沢東はラジオを通じ、今日、この日から中国は中華人民共和国と名乗り、新生国家として出発する、と世界に向けて宣した。
インド、イギリス、アメリカはこの宣言に驚き、事態にどう対処すべきか迷った。さらに中共は息継ぐ間もなく、チベットを〝帝国主義者〞から解放するため人民軍をチベットに進攻させる意図があると発表したのだ。
「帝国主義者だと?」チベット政府は、ここには〝帝国主義者〞などという者は存在しないのだから〝解放〞に来るには及ばぬと反論した。〔…〕
毛は自分の星回りに満足していた。中共軍は強化され、国民党は台湾で自分の傷をなめているのが精一杯だ。ネールは御し易く、ラサでは、年老いた迷信家共がぎゃあぎゃあわめいているに過ぎない。
君主はまだねんねだし、チベットの軍隊はといえば近代化し損ね、前世紀の遺物の銃を担いだ1万人足らずの玩具の兵隊だ。毛のチベット支配を止める者がどこにいるというのか。
1950年3月、チベット国境で数ヵ月間訓練を積み、満を持していた中共軍はついにカムに侵入を開始した。
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■ 中国はいかにチベットを侵略したか|マイケル・ダナム/山際素男:訳|講談社インターナショナル|2006年 03月|ISBN:9784770040305
★★★
《キャッチ・コピー》
100万人以上のチベット人が殺され、仏教建築物、書籍、芸術品などほとんどが破壊し尽くされた。それはさながらこの世の地獄だった。
「初めは友好的に振る舞い、そのうち暴力的になる」中国の侵略の実態。既成事実を周到に積み重ね、不条理を条理とする…。果敢に立ち向かったチベットの戦士たちが伝える警告の書。
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