梁石日■ 未来への記憶
私たちは秒刻みに、そして個人的な問題まで情報を共有できる時代に生きている。しかし、このことは、悪意的な権力を抑止できるとは限らないのである。
多様な情報は、私たちの感性や感覚を麻痺させ、多くの場合、無関心になるのだ。実際、私たちは世界各地で発生している悲惨な出来事をテレビの前で美味なる料理を食べながら観ることができる。〔…〕
めまぐるしく発生する事件に対して、私たちは一過性の出来事としてやり過ごし、思考停止状態に陥っている。
私たちの想像力は衰弱し、枯渇している。だが、事態は遠からず、私たちの日常生活を脅かすことになるだろう。それがどのような形で現われるのか、誰も予測できない。
誰も予測できないが、私たちが生きている《いま》とは未来にほかならないのである。いわば私たちはつねに、未来を生きているという意識を持つ必要があるだろう。
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■ 未来への記憶|梁石日|アートン新社|2006年 03月|ISBN:9784861930294
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《キャッチ・コピー》
今、私達はどんな時代に生きているのだろう。そして、どこへ行こうとしているのか。あの『血と骨』の作者がその超越したスケールで迫る骨太のエッセイ集。生きることの意味、戦争の不条理と悲惨、文学の力…。むずかしい時代を生きるために。
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