荒井千暁■ 職場はなぜ壊れるのか――産業医が見た人間関係の病理
「医はアートなり」といったのは、紀元前460年にエーゲ海のコス島で生まれた医聖ヒポクラテスでした。〔…〕
臨床医学の教官は「診断から治療に及ぶ行為の多くはサイエンスかもしれない。しかし病名告知を含めた個別対応のほとんどは、教養や感性に支えられた経験に基づくアートである。アートとは容易に到達できる域ではなく、もっと深遠なるもの」と説きました。
医業であってもそうでなくても、あらゆる仕事はスキルではなくアートだとわたしは思っています。辞書によれば芸術以外のアートとは、技術、技芸、技巧、熟練を示す用語であり、あることを成し遂げる技術と説明されています。
しかしそれさえも狭義の意味であって、本来は諸学や経験から生まれる人間の行動すべてを包括する概念なのでしょう。そこには熟成の知からなる無形文化財のようなものがあり、噴出する「知のマグマ」のような壮大なものまで含まれているように思えるのです。
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■ 職場はなぜ壊れるのか――産業医が見た人間関係の病理|荒井千暁|筑摩書房|2007年 02月|新書|ISBN:9784480063465
★★☆☆☆
《キャッチ・コピー》
いま職場では、働きながら心の病を発症する人が増えている。かれらは日常生活に支障が出るほど、心に深い傷を負っている。
睡眠障害を生じ、自律神経系が乱れ、うつになり、思考が混乱し集中できない。重いノルマ、評価の理不尽さ、周囲の無理解など、成果主義システムが生み出した実態を検証し、職場の人間関係に軋轢をもたらす原因を探る。
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