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2008.07.30

池内紀■ 出ふるさと記

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人はいくつ、ふるさとを必要とするのだろう? たぶん持つことが少ないほど、より多くのふるさとを必要とする。というのは持ちはこびのできるふるさと、ふるさとの「代用品」があるからだ。

非常に多くの場合、金銭がふるさとの代用をする。〔…〕

学歴も差、ふるさとの代用品である。〔…〕

名声もまた、ふるさとの代わりをする。

宗教もまた、ふるさとを代理する。〔…〕

ひそかに、ふるさとを持つことへの願望にあえいでいた。携帯のきくふるさと、ふるさとの代用品を持たないからこそ、より切実にふるさとを求めている。人間はなんとしても、ふるさとを必要とする生き物であるからだ――たとえ、たえず振り捨てるためだとしても。

それは思考にとっての論理と似ている。考えるためには形式上であれ論理がなくてはならない。論理のない思考は単に無意味なだけである。そして思考が論理を超えていくものであるように、何よりも超えるために、そこから出ていくために人はふるさとを持たなくてはならない。

ふるさとを持たないで老いるのは酷いことだ。

*

*

■ 出ふるさと記|池内紀|新潮社|ISBN9784103755050 200804

★★★☆☆

《キャッチ・コピー》

漂流、世捨て、雲隠れ。破天荒な人生を歩んだ12人の作家たち。人間存在への愛情と理解に貫かれた列伝紀行。

高見順/金子光晴/安部公房/永井荷風/牧野信一/坂口安吾/尾崎翠/中島敦/寺山修司/―尾崎放哉/田中小実昌/深沢七郎

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