堀内誠一■ 父の時代・私の時代――わがエディトリアル・デザイン史
でもね、絵本のない国というのはたくさんあるわけでね。本がないわけじゃないけれど、こんなにやたらにはね。そういう国を実際歩いてみて、 その国の子どもたちが、だから不幸だとはちっとも思えませんね。
必要だってのは、ほかの何かが逆に欠けてるからだって気がするんです。絵本に限らず。情報産業や商品にしたって。僕らのやってることって、そんなにたいそうなもんじゃないんですね。
外国から帰って二、三日テレビ見たり、国電に乗って中吊りポスター見たりして、なんとなくすべてわかったようになったときのあの気分……。飛躍するけど、僕達はいわれもない罪でこんな文明国に生まれちゃったという気分になりますね。
原始人とまではいわないけれど、木をくりぬいた太鼓に色塗って、それを叩いて、歌ったり踊ったりしてね。村じゅうでいちばん踊りがうまいから、いちばんきれいな娘さんをもらう……なんていうのがね、本当はいちばん良かったと思うんだよね――。
――エディトリアル・デザインは編集の領域に首をつっこんじゃう
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■ 父の時代・私の時代――わがエディトリアル・デザイン史|堀内誠一 |マガジンハウス |ISBN:9784838717842 |2007年04月
★★★☆☆
《キャッチ・コピー》
エディトリアル・デザインの仕事は、技巧の前に「表現しようとする人たちの心からの友人」であることが必要だ。戦前から1970年代まで、雑誌から絵本までを生き生きと語る圧倒的名著! 唯一の自伝。
《memo》
1979年11月に日本エディタースクール出版部から刊行の『父の時代・私の時代』の増補改訂版。
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