原田宏二■ 警察内部告発者
もし、「稲葉事件」がなかったら、私は裏金告発を実名で行っただろうか?〔…〕
稲葉事件とは、かつて道警本部生活安全部銃器対策課の「エース」と呼ばれた刑事・稲葉重昭警部が、突如、覚醒剤使用容疑で逮捕されたことに端を発する。
当初、道警の少壮幹部が覚醒剤を常用していた、というショッキングな面のみが強調されていたこの事件は、その後、次から次へと新たな事実が飛び出し、一刑事のスキャンダルとは、まったく別の様相を見せはじめるのだ。〔…〕
ロシアンマフィアや中国マフィアも暗躍するアウトローの世界で、違法なおとり捜査や、やらせの拳銃押収劇が繰り広げられ、その見返りとして薬物密輸が見逃され、はては、癒着の構図の中で、稲葉のように、覚醒剤の使用、密売にまで手を染める捜査員を生み出すまでになっていたというのだ。
しかし、個人から組織の問題に拡大し、ついには道警上層部の監督責任問題に発展するかに見えた、前代未聞の大スキャンダル事件は、時間を経るにしたがい、急速にスケールダウンし、そそくさと終焉を迎えることになった。
すなわち、道警は終始一貫、事件を稲葉個人の犯罪として処理し続けたのである。
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■ 警察内部告発者|原田宏二|講談社|2005年 03月|ISBN:9784062127417
★★★☆☆
《キャッチ・コピー》
2003年、北海道警察で浮上した裏金疑惑は、04年2月、元道警本部長の著者が「実名告白」したことで急展開を見せ、警察が隠蔽するスキャンダルを暴き出した。警察庁を頂点とした組織的な「裏金づくり」の全容と、警察キャリアたちに抑圧される現場警官の苦悩の実態に迫る!
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