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2008.07.28

伊井春樹・編■ 一千年目の源氏物語

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『源氏物語』は、国文学者の間では圧倒的に位置が高かったけれども、それ以外ではほとんど知られていなかった、軽んじられていました。

しかも、その軽んじる理由が、はなはだ非文学的なものだった。皇子が天子の后と恋仲になり、子が生れます。その子が帝になるという筋ですから、倫理上おもしろくない、けしからぬという儒者たちの言い分が通って、それで源氏は貶められていたのであります。〔…〕

そういう儒教的な『源氏物語』についての考えかた、これは明治になっても盛んでありまして、例えば、森鴎外、夏目漱石、この二人はどちらも明治時代最高の文学の目利きなんでありますが、両人とも源氏に対して冷淡であります。〔…〕

その衝撃の結果の最大のものは中央公論社の社長嶋中雄作が谷崎潤一郎に『源氏物語』の現代語訳を作らせたことであります。

これは最初の版では、例の皇統の乱れのことをぼやかすとか、いろいろ問題があったんでありますが、なにしろ谷崎の訳が中央公論社から出るというので、世間は大変な興奮ぶりを示し、たちまちにして『源氏物語』は現代日本文学の地続きの古典という、そういう格の高いものになった。親しみの深いものになった。

そして敗戦とともに、軍人が威張ることができなくなり、皇室関係のタブーがとけたときに、源氏は日本文学最大の長編小説ということに、天下晴れてなりました。

――昭和が発見したもの・丸谷才一

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■ 一千年目の源氏物語|伊井春樹・編|思文閣出版|ISBN9784784214082 200806

★★★☆☆

《キャッチ・コピー》

シンポジウム「一千年目の源氏物語」(大岡信・岡野弘彦・丸谷才一・加賀美幸子)、シンポジウム「私の源氏物語」(山折哲雄・中井和子・川本重雄・伊井春樹)をもとにし、斯界の識者による「源氏物語論」を集約。

山本淳子■ 源氏物語の時代―― 一条天皇と后たちのものがたり

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