開高健■ 一言半句の戦場――もっと,書いた!もっと,しゃべった!
他人さまの作品を判断するボクの基準は、実に簡単です。とくに新人賞、芥川賞の選考のときもそうだけど、ボクは作品中に一言半句、鮮烈な文句があればもう充分だというのが私の説やね。
一言半句でいいんだ。ところが、これが実にない。数万語費して一言半句でいいんだ。〔…〕
だけど、さまざまな作品をよーく気をつけて読んでごらん。この一言半句のある鮮烈さを持つ文章には、メッタに出食わせないから。いまどきの特徴は、器用なヤツが多い、才能のあるヤツはほとんどいない。
才能というのは、むずかしいんですよ。
うっかり、そんなもん持って生まれてきたら、世の中が非常に苦く、むずかしく、生きづらくなってくると思う。その苦々しさ、生きづらさと、その才能の格闘やな。そこにキラキラした部分、一言半句が蒸留されて出てくるわけだからね。
そんな人、7年にひとりかな、10年に1作かいなぁ。
――「開高健のノンフィクションライター読本」
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■ 一言半句の戦場――もっと,書いた!もっと,しゃべった!|開高健/開高健「単行本未収録作品集成」編集委員会|集英社|ISBN:9784087812770 |2008年05月
★★★★☆
《キャッチ・コピー》
エッセイ、コラム、聞き書き、インタビュー、対談、座談会、推薦文…。ひとつの時代を築き、忘れがたい哄笑を遺して去った作家、没後20年。蘇る!あのユーモア、切れ味、洞察、人間味。
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