« 堀内誠一■ 父の時代・私の時代――わがエディトリアル・デザイン史 | トップページ | 長谷邦夫■ 漫画に愛を叫んだ男たち »

2008.08.01

新藤兼人■ 生きているかぎり――私の履歴書

20080801sindoikiteiru_2

溝口健二の演出方法は他の新興の監督とは違っていた。カメラをロングに据え、カットを細かく割らないで、たいていの場面がワンカットで終わった。

そのため、俳優には苛酷な演技が要求された。延々とテストが行われ、一日中テストばかりでカメラを回さない日もあった。〔…〕

テストの繰り返しに俳優が堪りかね、

「先生、実際どうやったらいいか教えてください」

と反発した。溝口健二の演出は具体的な動きを示さず「反射してください」の一点張りだった。

俳優の反発を聞いた溝口は、顔を紅潮させて眼鏡を光らせ、

「ぼくは役者ではないから、演技をやってみせることはできません。あなたは俳優としてカネをもらっているのだから、やるべき仕事をやって私にこたえなさい」

たたきつけるような鋭い言葉でやり返すのだった。〔…〕

「反射してください」とは、溝口独特の表現である。相手の気持ちをしっかりと捉え、捉えた心を相手に返してください、ということである。

*

*

■ 生きているかぎり――私の履歴書|新藤兼人|日本経済新聞出版社|ISBN9784532166618 200805

★★★☆☆

《キャッチ・コピー》

故郷・広島、バラバラになった「家」、京都太秦、溝口健二、海軍二等水兵、松竹大船、独立プロ、乙羽信子との出会い、仕事師たち…。

新藤兼人■ ひとり歩きの朝

新藤兼人■愛妻記

にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ

|

« 堀内誠一■ 父の時代・私の時代――わがエディトリアル・デザイン史 | トップページ | 長谷邦夫■ 漫画に愛を叫んだ男たち »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 堀内誠一■ 父の時代・私の時代――わがエディトリアル・デザイン史 | トップページ | 長谷邦夫■ 漫画に愛を叫んだ男たち »