ビル・エモット■ アジア三国志――中国・インド・日本の大戦略
しかしながら、中国とインドと日本の関係は、これから10年もしくはそれ以上にわたって、いよいよ難しくなるだろう。あらゆる分野のいさかい、歴史的な恨み、地域の発火点などが、3カ国を取り囲み、押しつぶそうとする。〔…〕
この3カ国の関係を取り結ぶのが難しいのは、インドも中国も、成長し、貿易や海外投資が増えるにつれて、両国の政治と経済の利害が重なり合うようになって、おたがいの領分を侵すようになるからだ。
しかし、どちらもそこを自分の昔からの裏庭だと思っている。利害の重複は、すでに起きている。中国は資源を求めてインド洋を横断し、アフリカに手をのばしているし、インドはインドネシアとマレーシアのあいだのマラッカ海峡を通って束アジアに手をのばし、市場と通商の相手を探している。〔…〕
インド外務省のある高官は、2007年に話を聞いたときに、じつに的を射たいいまわしをした。
「あなたがたが理解しなければならない肝心な点は、われわれ〔インドと中国〕がどちらも、未来は自分のものだと考えているということです。どちらも正しいということはありえない」
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■ アジア三国志――中国・インド・日本の大戦略|ビル・エモット/伏見威蕃:訳|日本経済新聞出版社|ISBN:9784532353131|2008年06月
★★★☆☆
《キャッチ・コピー》
『日はまた昇る』のビル・エモットの最新作!三つどもえの権益争いを繰り広げるアジア3大国—— 中国、インド、日本の国家戦略を現地取材から描き出し、21世紀アジアの巨大な可能性と、その裏に潜むリスクを解説。

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