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2008.09.14

吉村英夫■ 放浪と日本人――「寅さん」の源流をさぐる

20080914yoshimurahourou

寅は帰るべき場所が確保されている。これでは真の放浪でも漂泊でもない。旅は仮の姿という思いが意識の奥にある。いざとなればさくらがおり、とらやが自分を温かく迎えてくれる。〔…〕

それにしても甘えたフーテンである。故郷という保険をかけた旅人なのである。〔…〕

啄木も放哉も山頭火も故郷や家族という保険をもたなかった。むしろマイナスに作用する家族だった。荷風にはカネがあるとか、方代にはさくらに似た姉がいるとか、多少の甘さがあるが、それでも寅の甘ちゃんとは比較にならぬ孤独な人生の旅人であった。〔…〕

飽食の昭和元禄的享楽に背を向けているのが寅であるのは確かであるが、墨染めの衣を着て明日の宿と食を保証されていないという旅ではないわけで、ともあれ高度成長のあぶくの影響をやはりどこかで享受しての旅なのである。

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■ 放浪と日本人――「寅さん」の源流をさぐる|吉村英夫 |有楽出版社/実業之日本社 |ISBN9784408592534 200510

★★★☆☆

《キャッチ・コピー》

「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎の放浪を念頭におきながら、彼の放浪が何に由来しているのか、日本人の旅の歴史、古人の放浪や漂泊のありようといかにつながっているのかをさぐる。在原業平から山崎方代まで、日本史を彩った有名無名の放浪者群像。

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