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2008.09.24

小島政二郎■ 小説 永井荷風

20080924kojimanagai

佐藤(春夫)は何年間か親灸して、その間ずっと彼の笑顔に騙されて、――実際は彼の崇拝の真心なんか少しも通じていないばかりか、最後に残酷な悪口を「日記」に書かれて佐藤が激怒したのも無理はない。

私も、何の言われもないのに、無実の悪声を6回も書かれた。世の中に、人の真心がありのまゝに心の鏡に写らない人くらい哀れな人間はいまい。殊に、芸術家の場合、この欠陥は致命的だ。

彼にあっては、一度何かで彼の感情を傷つけたが最後、それまで彼に尽くした親切も、恩誼も、一切水の泡となって、彼一流の名文という武器を揮(ふる)って、ある事ない事をまことしやかに書き立てて止まないのだ。〔…〕

彼よりも先きに死んだ者は災難だ。死人に口なしで、得たりとばかり面を向けん様もないくらい罵言讒謗(ばりざんぼう)の限りを尽くしている

プライヴュートの日記だから、何を書こうと遠慮はいらない。但し、「断腸亭日乗」はいつかは公刊されることを意識して編輯され且つ書かれているのだから、結局、巧みな二面作戦を実行している訳である。

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■ 小説 永井荷風|小島政二郎 |鳥影社|ISBN9784862650832 200709

★★★★☆

《キャッチ・コピー》

永井荷風に憧れ慶應義塾に入学するも、その思い届かず、人知れず葛藤した小島政二郎。大正から昭和の文壇を隅々まで知りつくした彼ならではの、荷風の実像に迫った幻の書。

memo

1972年、“校正も終わって製本も出来ようという時になって、永井家の許可が得られずに“未刊のままとなった「評伝」が当時の「ゲラ刷り」をもとに35年ぶりに刊行。

小島 政二郎 ■ 俳句の天才―久保田万太郎

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