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2008.10.07

乃南アサ■ ミャンマー――失われるアジアのふるさと

20081007nonamimyanma

「ミャンマーはいい国だと思いますか」

彼は、いかにも青年らしく、まるで臆する様子もなく言った。私は思わず「しいっ」と自分の唇に指を立てて見せた。

「大きな声で言っては、駄目でしょう?」

すると彼は、「日本語だから大丈夫です」と少しだけ笑った。それから、明らかに憤った表情に変わり、語気を強めた。

「わたしは、ミャンマーは悪いと思います。政府が悪いです。今のミャンマーはいい国ではありません」

隣では先輩僧侶が、半ば困惑した、けれど否定も出来ないというような、実に優しげな表情で小さく領いている。

「いい国ではありませんか」

今度は私が尋ねた。

「そうです。今、ミャンマーの政治は悪いです。最低です」

いくら日本語でも、どこで誰に聞かれているか分からないと思うと、ついドキドキしてしまう。だが、若い彼の瞳は、文字通り燃えているように見えた。

「ミャンマーの政治は、ミャンマーの人のためのものではありません」

*

*

■ ミャンマー――失われるアジアのふるさと|乃南アサ/写真・坂斉清 |文藝春秋|ISBN9784163701400 200806

★★★☆☆

《キャッチ・コピー》

ふと訪れたデモと軍政が対峙する国で、作家の心を強く捉えたのは、不思議な“懐かしさ”だった。それは、わたしたちアジア人の「ふるさと」なのかもしれない。ミャンマーで普通に暮らし、生き続けている人々の姿を描く。

memo

 大きなアクシデントもハプニングも起こらず、同行者についても語らぬ淡々としたミャンマー紀行。

椎名誠■ 秘密のミャンマー

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